うちの店はもともと先代が別のところでお店を借りてやってたんですけども、ちょうど15年前、私の代になって思い切ってお店を建てたんです。あのころはフィルム全盛の頃で4、5年は良かったんですよ。で、2000年くらいから、ゆっくりと、静かに落ちていって、ここ2、3年で急にダメになっちゃって。ああ恐ろしい(笑)、一気にでしたね。

それで、本気でやらないと店潰れてしまうと思って、2007年の春くらいから復活計画を始めました。ま〜最初は全然反応がなくてね(笑)。まずは地域にチラシを打ったんですけどだめで、これはやり方が違うと思って、店構えを徹底的に変えていきました。売れなくてもいいから、変なモノを置こうと。

というのは、デジカメのプリントって10分ぐらいでできるから、できるまで待ってますっていうお客さんもいるんですね。そういう方は必ず店をじっくり見る。そんなとき、当時はただのカメラ屋さんだったから、何にも見るもんがなかった。それで、妙なロウソクとか、雑貨屋さんで見つけたようなモノを置いたりするところから変えていったんです。そうするとやっぱり買ってくれたりもして、その売上がどうというより「写真屋でなぜか雑貨を買っている」ことで、お客さんの店に対する気持ちが変わるんじゃないかな? と思ったんですね。

あと、そんな中でもデジカメのことはやるし、やんなきゃいけないけども、結局フィルムですよね。フィルムが好きで撮ってるお客さんもまだまだいる。考えてみれば、これまでは商売ばっかりで、そんな人達をないがしろにしてたんじゃないかって。それじゃあ、お客さんだってつまんなかっただろう。そう思って、フィルムやカメラによるプリントの違いとか補正有りとか無しとか、そんなのが分かるプリント色見本を作ったんです。

そしたら、やっぱり「えっ、こんなことできるんだ」って反応があって。こういうことを東京じゃなく、地方の写真屋がやるのって大変だと思われるかもしれないんですけど、原点に返れば僕らは写真屋じゃないですか。フィルム現像もプリントもやるし撮影もする。昔は小さな町の写真屋はなんでもやらなきゃいけなかったのを「今はデジカメの時代だからこれしかやらない」って態度でいたら余計に写真屋じゃなくなっていく気がしてね。やっぱり同業者はみんな諦めてるんですよ。「DPEなんか増えるわけがない。無理だ」って。それを聞くとなんで減ってるのを戻そうとしないのか?って思うんです。

あるとき「カメラ日和」って雑誌にオススメの写真屋さんとして一行載せていただいたんですね。そしたら、それを見た方が青森の八戸から来てくれて。普通は写真屋さんなんて、家から一番近いところに行くじゃないですか。それを遠く何十キロと離れた場所から来てくれるなんて、感動ものですよね。フィルム1本現像プリントして感動した事って、たぶん今までなかったんじゃないかな?

その事があってから、本当に基本的な事、ちゃんときれいにいいプリントを仕上げて、お客さんを喜ばせる。それを完全に忘れてたんじゃないかなと気づいたんです。ほんと今つくづく思います。だからダメになったんですよね。お客さんは何年も前からいつだってフィルム1本を大切に撮って持って来てるわけなのに、それをただドンドン焼いて「はい、どうぞ」ってやってたわけですからね。だから、これからの写真屋さんは、お客さんとお店が一緒に喜べるプリントとか、お互いに共感できる部分を増やさない限り、もう無理だと思うんですね。どこにでもある店としか思ってもらえなかったら、別にここに持って来なくてもいいんですもんね。

軽米写真館
岩手県九戸郡軽米町軽米 8-56-3(TEL. 0195-46-3337)
http://www.karumai.net/